2016年6月 後遺障害の基礎知識 2016年06月24日 後遺障害9級の自覚症状は?認定されない?認定件数の傾向から慰謝料・示談金相場まで解説 交通事故の治療を続けても、痛みやしびれ、関節の動かしにくさ、視力や聴力の低下などが残ることがあります。 こうした症状が医学的に残存し、事故との因果関係が認められる場合に、後遺障害等級が問題になります。自賠責の考え方としても、後遺障害は「治ったときに身体に残った状態」であり、医学的に認められる症状で、かつ相当因果関係があるものが対象です。 この記事では、後遺障害9級で多い自覚症状、認定されない典型パターン、認定率の目安、そして慰謝料・示談金相場の考え方を、実務の流れに沿って整理しますね。 後遺障害9級は「労務に相当な制限が出るレベル」の障害が想定される 後遺障害9級は、後遺障害等級の中では中程度からやや重い領域に位置します。自賠責の等級表では、視力や視野、鼻の欠損、咀嚼や言語、聴力の低下、そして神経系統や胸腹部臓器の機能障害により「服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」などが列挙されています。 特に実務で多いのは、いわゆる神経症状の重い型です。画像や検査で裏付けが乏しいまま痛みだけが残るケースではなく、所見や経過の整合性が一定程度そろい、生活や仕事への支障が明確に説明できるケースが9級に近づきます。 石澤法務事務所でもよくお伝えしていることですが、単に『腰が痛い』だけでは9級は届きません。 例えば、 『30分座りっぱなしだと激痛で仕事にならない』 『握力が半分以下になり、工具やペンを長時間握れない』 といった、具体的な「労働の質」の低下が問われます。審査側は、あなたの私生活がどれほど制限されているかを見ています。 後遺障害9級で多い自覚症状は痛みとしびれだけではなく「生活上の支障まで含めて評価される」 後遺障害9級に関心がある方の多くは、次のような自覚症状を訴えます。 まず多いのが、頸部や腰部の痛み、上肢や下肢のしびれ、握力低下、長時間の同一姿勢がつらい、立位や歩行の継続が難しい、といった神経症状です。仕事では、集中力の維持が難しい、作業スピードが落ちる、痛みで休憩を挟まないと回らない、出張や運転が厳しいなど、労務の制限として具体化しやすい症状が問題になります。 また、9級は視力・視野・聴力・咀嚼や言語など感覚器や機能の障害も対象となり得ます。たとえば視力低下や視野障害は検査で数値化されるため、要件を満たせば比較的争点が整理しやすい一方、神経症状は症状の一貫性と医学的説明が重要になりやすい領域です。 保険会社は『日常生活は送れているじゃないか』と低く見積もってきます。私は、その『数字に現れない苦労』をいかに書類に叩き込むかに、全精力を注いでいます。ここが、ただの事務作業とプロの仕事の分かれ目です! 後遺障害9級が認定されない「原因は診断書の中身と検査と日常の説明が噛み合っていないこと」が多い 後遺障害の認定では、症状の存在と事故との因果関係が争点になります。9級で不認定になりやすい典型は次のとおりです。 通院頻度や治療内容が途中で大きく空いてしまい、症状が継続していたことが記録から読み取れない 後遺障害診断書の記載が抽象的で、他覚所見や検査所見との対応関係が弱い 画像や神経学的所見、可動域計測などの客観情報が不足し、症状の強さを裏付けられない 日常生活や就労上の支障の説明が、症状の内容と結び付いていない 既往症や加齢変化との区別が整理されていない 9級は、限度額や慰謝料の水準が上がる分、審査側も説明の整合性を細かく見ます。症状の訴え自体は自然でも、診断書の表現、検査、通院経過、生活上の支障の説明がそれぞれ別々に動いてしまうと、結論として不認定や下位等級に寄っていきます。 後遺障害9級は、申請設計の差が出やすい 認定率という言い方には注意が必要ですが、目安として、等級別の認定件数の分布を見ると、9級は突出して多い等級ではありません。ある年度の自賠責データでは、9級の認定件数が689件で全体に占める割合が1.91パーセントと示されています。 神経症状を中心に9級を狙う場合は、最初から9級相当の説明が組めているかで結果が大きく変わります。 後遺障害診断書の書き方は医師の領域ですが、被害者側でも、症状の経過や日常生活・就労で困っている点を具体的に整理して伝えること、通院中の症状変化や支障を記録して提示することはできます。また、検査の実施そのものは医師が医学的必要性を判断しますが、被害者側ができるのは、医師が判断しやすいだけの情報(痛み・しびれの出方、悪化条件、できない動作、業務上の支障など)を揃えて提供することです。 後遺障害9級の慰謝料と示談金相場は基準の違いを理解しないと判断を誤る 後遺障害9級の示談金は、後遺障害慰謝料だけで決まりません。代表的には、後遺障害慰謝料、逸失利益、治療費、休業損害、通院交通費などの合計で考えます。そのうえで、どの基準で計算するかにより金額が大きく変わります。 裁判基準と呼ばれる水準では、後遺障害9級の慰謝料が690万円として示されることが一般的です。一方で、後遺障害が認定されなければ当然0円となります。 逸失利益は労働能力喪失率35%が一つの目安になり金額の幅が大きい 後遺障害9級では、労働能力喪失率が35パーセントと整理されています。逸失利益は、収入、喪失率、喪失期間の組み合わせで決まるため、慰謝料よりも金額が大きく動きます。年収や職種、症状が仕事に与える影響の説明が的確であれば、示談金の中心項目になります。 逆に、症状があるのに「仕事は従前どおり」とだけ整理されてしまうと、逸失利益が小さく評価され、総額が伸びません。9級の実務では、仕事への支障を盛り過ぎず、しかし曖昧にもせず、具体的な制限として言語化することが重要です。 後遺障害9級で後悔しないために最初に押さえるべき実務ポイント 後遺障害9級を目指すか、9級相当を争うかにかかわらず、次のポイントは早い段階で整えておくと有利です。 症状固定の前に、必要な検査や所見を取り切る 通院の空白を作らず、症状の推移をカルテに残す 後遺障害診断書は、日常生活と労務の制限が伝わる内容にする 被害者請求を含め、資料の出し方を戦略的に組む 相手保険会社の提示がどの基準かを見極め、根拠を確認してから交渉する 後遺障害9級は、症状の説明と資料の整合性が結果を左右しやすい等級です。少しのずれが不認定や下位等級につながり、その差が慰謝料や逸失利益に直結します。 後遺障害9級は症状の一貫性と資料設計で結果が変わり示談金も大きく動く 後遺障害9級は、労務が相当程度制限される障害として位置付けられ、視力・聴力・咀嚼言語・神経症状など幅広い症状が対象です。自賠責基準の後遺障害慰謝料は249万円で、保険金額は616万円という枠組みがあります。裁判基準の慰謝料は690万円が一つの目安とされ、基準の違いだけで大きな差が生じます。そして、逸失利益は喪失率35パーセントを目安に金額の振れ幅が大きく、生活と仕事の具体的支障をどう組み立てるかが重要です。 1