• 後遺障害の基礎知識
2019年12月21日

「症状固定」と言われたら要注意?後遺障害認定を左右する重大な分岐点

交通事故によるケガで治療を続けていると、ある時点で保険会社から「そろそろ症状固定の段階ですね」と伝えられることがあります。 この「症状固定」という言葉は、交通事故の実務において極めて重要な意味を持ちます。なぜなら、症状固定の判断ひとつで、その後の治療、後遺障害認定、賠償額のすべてが大きく左右されるからです。 「症状固定ですね」って言われた瞬間、被害者の方は『もう治療できないの?』って焦ります。でも実務では、ここが後遺障害認定の勝負どころです。焦って流されると、後から取り返すのが本当に難しくなります。まずは「その場で同意しない」が基本です。    症状固定の医学的な定義 症状固定とは、医学的に、 今後、治療を継続しても、症状の大幅な改善が見込めない状態 を指します。 完全に治癒した状態を意味するものではありません。痛みやしびれ、可動域制限などの症状が残っている場合でも、改善の見込みが乏しければ症状固定と判断されることがあります。 つまり症状固定とは、 「治った」という意味ではない 「治療の限界点に達した」という医学的評価 であり、治療経過の一区切りを示すものです。 症状固定は治療期間の終期を意味する 症状固定がなされると、実務上は、 治療が終了した ケガの状態が確定した と扱われます。 この時点を境に、事故対応は「治療のフェーズ」から「後遺障害・賠償のフェーズ」へと移行します。 ここが、被害者にとって最も重要な分岐点です。 症状固定後に請求できなくなるもの 症状固定と判断されると、原則として以下の費目はそれ以降、請求できなくなります。 治療費 通院交通費 入通院慰謝料 つまり、症状固定は、 保険会社が治療費を支払う義務が終了するライン でもあります。 そのため、症状固定のタイミングが早すぎると、 本来必要だった治療が打ち切られる 症状が十分に固まる前に治療が終わる 後遺障害認定に必要な医学的資料が揃わない といった重大な不利益につながる可能性があります。 症状固定の最終判断は「医師」が行う ここで重要なのは、症状固定は医学的判断であり、最終的に判断するのは医師であるという点です。 保険会社が「症状固定ですね」と言ってきても、 医師が症状固定と判断していない 医師がまだ治療継続の必要性を認めている のであれば、症状固定は成立しません。 しかし実務上は、 保険会社の意向に引きずられる 医師が深く説明しないまま症状固定と記載してしまう といったケースも少なくありません。 保険会社が症状固定を促す理由 保険会社が症状固定を早期に打診してくる背景には、明確な理由があります。 治療費の支払いを終了したい 事故対応を早く終結させたい 後遺障害認定を回避・抑制したい 症状固定が早まるほど、 治療期間は短くなり 医学的資料は薄くなり 後遺障害認定は不利になりやすい という構造があるためです。 症状固定と後遺障害認定の関係 後遺障害等級認定は、症状固定後でなければ申請できません。 つまり、 症状固定の時点で どのような症状が どの程度残っているか が、後遺障害等級を左右するすべての基礎情報になります。 この時点で、 診断書の内容が不十分 検査が足りない 症状の一貫性が記録されていない 場合、たとえ実際に強い後遺症が残っていても、等級非該当や低い等級にとどまるリスクが高くなります。 安易な症状固定が招く典型的な失敗例 実務では、次のようなケースが非常に多く見られます。 保険会社に言われるまま症状固定 医師と十分な相談をしないまま同意 後遺障害診断書を急いで作成 結果、非該当や14級止まり あとから「もっと治療を続けていれば」「検査を受けていれば」と後悔しても、症状固定後に状況を覆すのは非常に困難です。 症状固定前に考えるべき視点 症状固定を迎える前に、少なくとも以下の点は整理しておく必要があります。 症状は本当にこれ以上改善しないのか 痛み・しびれ・可動域制限はどの程度残っているか 生活や仕事への支障はどのレベルか 医学的にそれを裏付ける資料は十分か これらを踏まえずに症状固定を迎えることは、後遺障害認定における最大のリスク要因です。 石澤法務事務所が重視する「症状固定前後」の設計 石澤法務事務所では、後遺障害等級認定を専門に扱う立場から、 症状固定のタイミング 症状固定時点で残すべき医学的記録 後遺障害診断書に反映すべき内容 を逆算型で設計します。 単に「申請する」のではなく、 この症状を、この等級で評価してもらうために、症状固定時点で何が必要か を明確にしたうえで対応します。 症状固定は「終わり」ではなく「スタート」 症状固定は、 治療の終わり 事故対応の終わり ではありません。 むしろ、 後遺障害認定 賠償額の確定 将来の生活を左右する判断 が始まる最重要フェーズの入口です。 この段階で判断を誤ると、本来受け取れるはずだった補償を永久に失う可能性があります。 症状固定に不安を感じたら、石澤法務事務所に相談を 「本当に今、症状固定でいいのか」 「後遺障害として評価される余地はあるのか」 「この症状は何級相当なのか」 こうした疑問を持った時点で、後遺障害実務に精通した石澤法務事務所へご相談ください。 石澤法務事務所では、症状固定前後の判断から、後遺障害等級認定まで一貫してサポートしています。
  • 後遺障害の基礎知識
2019年12月19日

交通事故後遺障害における逸失利益の算定方法とは?

交通事故によって後遺障害が残った場合、事故がなければ将来にわたって得られたはずの収入が失われることがあります。この将来の収入減少分を金銭的に評価したものが「逸失利益」です。 逸失利益は、治療費や休業損害とは異なり、後遺障害が認定されて初めて請求できる損害項目であり、賠償額の中でも大きな割合を占めることが少なくありません。   逸失利益って、被害者の方の体感だと“ピンとこないお金”になりやすいんですが、実際は賠償の中でかなり大きい柱です。しかも、治療費みたいに「かかった分」ではなく、将来の不利益をどう評価するかなので、ここを甘く見られると金額差が一気に開きます。   逸失利益の基本的な計算式 逸失利益は、次の計算式に基づいて算出されます。 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する係数 この3つの要素の組み合わせによって、最終的な逸失利益額が決まります。どれか一つが過小評価されると、本来受け取れるはずの金額との差が大きくなります。 「基礎収入」とは、原則として事故前の収入額 「基礎収入」とは、原則として事故前の収入額を指します。 会社員や自営業者の場合は、事故前の実際の収入(給与・事業所得)が基礎となりますが、必ずしも現金収入があることが条件ではありません。 たとえば、 専業主婦 パート・アルバイト 学生 といった方であっても、「賃金センサス(統計資料)」を用いて、社会的に評価された労働価値を基礎収入として算定します。 この点を正しく理解していないと、「収入がないから逸失利益は出ない」と誤った前提で話が進んでしまうことがあります。     ここ、誤解されやすいんですが、「今たまたま収入がない」=逸失利益ゼロ、ではありません。専業主婦や学生、パートの方でも、社会的な労働価値を統計で評価できるケースがあります。最初の段階で『収入ないので逸失利益は出ませんね』みたいな話になっていたら、前提が間違っている可能性があるので注意してください。    労働能力喪失率の位置づけ 「労働能力喪失率」とは、事故によってどの程度、労働能力が失われたかを割合で示したものです。 この割合は、 後遺障害等級 症状の内容 職業への影響 などを踏まえて判断されます。 実務上は、後遺障害等級ごとに一定の目安となる喪失率が存在しますが、必ずしも一律に決まるものではありません。 同じ等級であっても、 職種 実際の業務内容 症状の影響度 によって、評価が調整される余地があります。 労働能力喪失期間の考え方 「労働能力喪失期間」とは、事故によって失われた労働能力が、将来にわたってどれくらいの期間影響するかを示すものです。 一般的には、 就労可能年齢:67歳 そこから症状固定時の年齢を差し引いた期間 を基準として考えられます。 ただし、すべてのケースで一律に67歳まで認められるわけではなく、 後遺障害の内容 症状の重さ 回復の可能性 などを考慮して、期間が短縮されることもあります。 ライプニッツ係数を用いた現在価値への換算 逸失利益は、将来にわたる収入減少を一括で受け取ることになるため、中間利息を控除した現在価値に引き直して計算されます。 このときに使われるのが、ライプニッツ係数です。 ライプニッツ係数は、 労働能力喪失期間 年5%の中間利息控除 を前提に算出された数値であり、喪失期間が長くなるほど係数は大きくなります。 ライプニッツ係数については、以下の記事で詳しく解説しています。 [post_link id="170"]  逸失利益は後遺障害等級認定が前提 逸失利益の算定は、後遺障害等級が認定されていることが前提条件です。 後遺障害が非該当と判断されてしまうと、基礎収入や喪失率をいくら主張しても、逸失利益そのものが認められません。 そのため、 適正な後遺障害等級認定 症状の実態を正確に伝える資料の整備 が、逸失利益確保の出発点となります。 石澤法務事務所が重視する実務ポイント 石澤法務事務所では、逸失利益の金額そのものだけでなく、その前提となる後遺障害等級認定の段階を最も重視しています。 具体的には、 後遺障害等級が過小評価されていないか 労働能力喪失率が症状や職業に見合っているか 喪失期間が不当に短く設定されていないか といった点を、過去の認定実績・実務データをもとに精査します。 後遺障害認定が適正に行われなければ、その後の逸失利益算定も適正にはなりません。 専門家による検討が重要な理由 逸失利益は、一見すると計算式に当てはめるだけのように見えますが、実際には各要素の評価が争点になることが多い損害項目です。 特に、 非該当とされた後遺障害 低い等級にとどまったケース 異議申し立てを検討している場合 には、後遺障害実務に精通した専門家による検討が欠かせません。
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