• 後遺障害の基礎知識
2019年04月21日

交通事故後のうつ・PTSDは後遺障害になる?非器質性精神障害の等級認定と実務のポイント

非器質性精神障害とは、脳挫傷や脳出血などの器質的(画像で確認できる)損傷が認められないにもかかわらず、精神機能に障害が残る状態を指します。交通事故をきっかけとして発症するケースが多く、うつ病、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、不安障害、適応障害などが代表例です。 これらは外見上は分かりにくく、レントゲンやMRIで明確な異常が確認できないことも多いため、被害者本人が強い苦痛を抱えていても、周囲や保険会社から正当に評価されにくい後遺障害であるという特徴があります。   精神の後遺症は、周りから「気の持ちよう」って言われてしまいやすいんですが、実務的には「証拠が残りにくい後遺障害」なんです。だから軽いわけじゃなくて、手続き上、取りこぼしが起きやすい。最初にこの前提を知っておくだけで、認定の戦い方が変わります。   交通事故後に現れやすい精神症状の具体例 交通事故後、次のような症状が継続的に現れる場合、非器質性精神障害が疑われます。 車に乗ろうとすると強い恐怖や不安が生じる 事故の場面が突然フラッシュバックする 夜眠れない、悪夢で目が覚める 動悸、息苦しさ、強い緊張感が続く 気分の落ち込み、意欲低下、集中力の低下 外出や就労が困難になる 感情の起伏が激しくなり、日常生活に支障が出る これらの症状が事故前には存在せず、事故を契機として出現・固定化していることが重要な判断材料となります。 非器質性精神障害が後遺障害として認定される仕組み 交通事故における後遺障害は、自賠責保険の後遺障害等級認定手続きを経てはじめて、法的に「後遺症が残った」と評価されます。 非器質性精神障害については、主に次の3つの等級が問題となります。 非器質性精神障害に該当する後遺障害等級 第9級10号(労務制限が相当程度認められる状態) 通常の労務には服することができる ただし、非器質性精神障害により就労可能な職種が相当程度制限される状態 職場復帰が難しい、業務内容の大幅な変更が必要なケースなど 第12級13号(一定の精神的障害が残存する状態) 通常の労務には服することができる 非器質性精神障害により多少の障害が残っている状態 不安・抑うつ症状が継続し、日常生活や就労に支障があるケース 第14級9号(軽微だが無視できない精神症状が残る状態) 通常の労務には服することができる 非器質性精神障害により軽微な障害が残っている状態 精神症状が軽度でも、事故との因果関係が認められる場合   精神障害の等級は、「診断名」で決まるわけじゃないです。うつ病・PTSDと書いてあっても、仕事や日常生活の制限がどの程度か、そしてそれが医証(診断書や通院経過)にどう落ちているかで決まります。現場の感覚としては、症状の強さより「生活への影響が書類で再現できているか」が勝負になりやすいです。   非器質性精神障害 × 等級別の具体的認定事例 非器質性精神障害は、症状の強さ × 生活・就労への影響 × 医証の整い方この3点の組み合わせによって等級が分かれます。 ここでは、第9級・第12級・第14級それぞれについて、「どのような状態だと、その等級になるのか」が直感的に分かるよう、具体事例で整理します。 第9級10号に認定された典型事例「就労は可能だが、職種・業務内容が大幅に制限されるケース」 事例①:PTSDによる職種制限が認められたケース 被害者属性 40代男性 職業:営業職(自動車運転が必須) 事故態様:追突事故(高速道路) 主な症状 車に乗ろうとすると動悸・過呼吸 事故現場を思い出すフラッシュバック 夜間の不眠、集中力低下 抗不安薬・睡眠薬を継続処方 就労状況 事故後、営業職としての復帰が困難 会社の配慮で内勤業務に配置転換 給与は減少、昇進の見込みも後退 評価ポイント 通常労務(軽作業・内勤)は可能 しかし、事故前の職種(営業・運転業務)が実質的に不可能 就労可能な職種が「相当程度制限」されている 認定結果■ 第9級10号 認定 「非器質性精神障害により、就労可能な職種が相当な程度制限されるもの」 第12級13号に認定された典型事例「日常生活・就労に支障が続くが、職種制限までは至らないケース」 事例②:うつ症状が固定化し、生活に支障が残ったケース 被害者属性 30代女性 職業:事務職 事故態様:交差点での出会い頭事故 主な症状 抑うつ気分、意欲低下 朝起きられない日が増加 集中力低下、ミスが増える 抗うつ薬を半年以上継続 就労状況 フルタイム勤務は可能 ただし、欠勤・早退が増加 業務効率が明らかに低下 評価ポイント 通常労務は一応可能 しかし、精神症状が固定化し、日常生活・就労に明確な支障 医師の診断書に「症状固定後も改善困難」との記載あり 認定結果■ 第12級13号 認定 「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」 第14級9号に認定された典型事例「軽度だが無視できない精神症状が残存するケース」 事例③:軽度PTSD症状が残存したケース 被害者属性 20代男性 職業:大学生(アルバイト) 事故態様:自転車走行中に自動車と接触 主な症状 車の音に過敏に反応 事故現場付近を避ける行動 不安感が続くが、日常生活は概ね可能 就学・生活状況 大学への通学は継続 アルバイトも再開 ただし、精神的ストレスは継続 評価ポイント 労務・学業は可能 しかし、事故による精神症状が医学的に確認でき、完全消失していない 心療内科での通院記録あり 認定結果■ 第14級9号 認定 「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの」 非器質性精神障害が認定されにくい理由 非器質性精神障害は、後遺障害の中でも特に認定が難しい分野とされています。その理由は明確です。 画像検査で客観的異常が出にくい 症状が主観的になりやすい 医師の診断書の書き方で評価が大きく左右される 事故との因果関係が争われやすい そのため、単に精神科に通院しているだけでは、適正な等級認定に至らないケースが非常に多いのが実情です。 早期の専門医受診が重要になる理由 事故後に精神的な異常を感じた場合、できるだけ早期に精神科・心療内科などの専門医を受診することが重要です。 初診時期が遅れると、事故との因果関係が否定されやすくなる 症状の経過が医療記録として残らない 後遺障害診断書に反映されにくくなる 「気のせいかもしれない」「我慢すれば治る」と判断せず、事故後の異変として医師に正確に伝えることが、後の認定手続きに直結します。 非器質性精神障害の後遺障害認定に必要な視点 非器質性精神障害の認定では、次の点が特に重視されます。 事故前と事故後の精神状態の明確な差 症状の継続性・一貫性 治療内容と治療期間 医師の専門的見解 日常生活・就労への具体的影響 これらを医学的・実務的に整理し、適切な形で提出することが不可欠です。 石澤法務事務所が非器質性精神障害に強い理由 石澤法務事務所では、非器質性精神障害を含む「目に見えにくい後遺障害」の認定実務に専門特化して取り組んでいます。 過去の認定・非認定事例を踏まえた医療調査 精神科医の診断内容を認定基準に即して整理 事前認定で不利になりやすいケースの被害者請求対応 非該当となった場合の異議申立て対応 単なる書類提出ではなく、「なぜこの症状が後遺障害として評価されるべきか」を、認定機関に伝わる形で構成することを重視しています。 非器質性精神障害で悩んでいる方へ うつやPTSDなどの精神的後遺症は、「見えないから軽い」「気の問題」では決してありません。 交通事故をきっかけに人生が大きく変わってしまう方も少なくなく、その影響は就労・家庭生活・社会生活全般に及びます。 「この症状は後遺障害になるのか」 「非該当と言われたが納得できない」 「今の等級は本当に適正なのか」 このようなお悩みをお持ちの方は、交通事故後遺障害、とくに精神障害の認定に精通した専門家への相談が重要です。 石澤法務事務所では、非器質性精神障害についても一つひとつ丁寧に状況を確認し、最適な後遺障害認定手続きをご提案しています。
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