症状・障害別ガイド 症状・障害別ガイド 2024年02月19日 交通事故のむち打ちの後遺障害の認定が難しい理由とは?失敗しない進め方を解説 交通事故のあと、「骨は折れていない」「画像に異常がない」と言われたのに、首の痛みや頭痛、しびれ、めまいが続く。むち打ち(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群)に関するご相談では、こうした話が本当に多いです。 石澤法務事務所では、むち打ちによる後遺症のご相談がもっとも多い分野で10,000件以上の解決事案データを持って対応しています。 痛みがあるのに周囲に伝わりにくい。仕事も家事も、以前のようにはいかない。けれど見た目は普通に見える、このギャップが、むち打ちの後遺症をいちばん苦しくします。 むち打ちの怖さは、「体の痛み」より先に、「人に信じてもらえない苦しさ」が来るところです。画像に異常が出ないと、「気のせい?」「大げさ?」みたいな空気になる。でも本人は、運転・家事・仕事・睡眠の全部が削られていく。ここで孤立してしまうと、通院も途切れがちになって、結果的に認定でも不利になっていまうケースがあります。 そしてもう一つ、現実として知っておいていただきたいことがあります。むち打ちの後遺障害は、「症状が軽いから認定されない」のではなく、「伝え方と資料の整い方で結果が大きく変わる」ということです。裏を返すと、早い段階で方針を誤ると、後遺症が残っているのに「非該当」と判断され、賠償や示談が不利に進んでしまうことがあります。 この記事では、「交通事故 むち打ち 後遺症」で検索してたどり着いた方が、いま何に困っていて、何から整えるべきかを、実務目線でわかりやすく整理しました。 むち打ちの後遺症は「目に見えにくいのに生活を削る」タイプの障害 むち打ちのつらさは、骨折や外傷のように“見て分かる”傷ではないことにあります。痛みやしびれ、違和感は確かにあるのに、画像で説明しづらい。仕事や家事の中で、じわじわと生活の質が落ちていく。そういうケースが目立ちます。 むち打ちの後遺症でよく訴えがある症状は、次のようなものです。 頚部痛(首の痛み)、肩こり、首が回らない感じ 頭痛(特に夕方以降や天候で悪化するという訴えも多いです) めまい・ふらつき、吐き気 上肢のしびれ、腕がだるい、指先が感覚鈍い 倦怠感、集中力の低下、睡眠の質の低下 背中の張り、眼精疲労、耳鳴りなど これらは、外見から分かりにくい上に、「日によって波がある」こともあります。本人としては確かに困っているのに、周囲には“調子がいい日”だけが見えてしまい、理解されにくい。ここで孤立してしまう方も少なくありません。 後遺障害等級認定は「ある・ない」ではなく「立証の設計」で決まりやすい 交通事故の後遺障害等級認定では、ざっくり言うと次のポイントが見られます。 事故で生じた症状なのか(因果関係) 治療を続けても症状が残ったのか(継続性・一貫性) 症状固定後も残存し、回復が見込みにくいのか(後遺障害性) むち打ちの後遺症が難しいのは、ここで求められる「客観性」が作りにくいことです。つまり、症状はあるのに、審査側が“判断しやすい材料”として整理されないまま申請されやすい。これが「むち打ちは認定されにくい」と言われる最大の理由です。 実務上、むち打ちでは後遺障害等級14級9号(局部に神経症状を残すもの)や、状況により12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)が争点になりやすい類型です。ここでも、症状の重さそのもの以上に、症状の裏付け・経過・整合性が問われます。 画像に異常が出にくいことが認定の難易度を上げる むち打ちの多くは、レントゲンやMRIで「決定的な異常」がはっきり出ないことがあります。画像に映らない=症状がない、ではもちろんありません。ただ、審査は書面中心です。画像所見が弱い場合、他の材料で“症状が続いていること”を組み立てる必要があるのに、そこが不足しがちです。 ここで大切なのは、「画像に出ないから無理」と諦めることではなく、画像以外の記録(診療録、通院経過、所見、生活支障)を丁寧に積み上げるという発想です。 通院の頻度や中断が「症状の一貫性」を疑われる原因になる むち打ちで非常に多い落とし穴が、通院の間隔が空いたり、途中でやめてしまったりすることです。仕事や家庭の事情で仕方ない面もあります。ですが、審査や示談の場面では次のように見られがちです。 症状が軽くなった(から通院していない)のでは 本当に継続して困っていたのか 別の原因(加齢、仕事、持病)ではないか 特に、事故後の初期に通院が少ない・空白があると、後から取り戻すのが大変になります。むち打ちの後遺症は「継続して困っていた」ことが重要なので、通院実績の積み上げは軽視できません。 「2〜3週間あいただけ」のつもりでも、書面の世界では空白は空白です。審査側は『その間、本当に困っていたのか?』と見ます。仕事で行けない事情があるなら、最初から「行ける頻度で継続する設計」を作った方がいい。むち打ちは、ここを落とすと後半で巻き返しが効きにくいです。 保険会社の治療費打ち切りが「早すぎる症状固定」を招きやすい むち打ちの案件では、一定期間が経つと保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。ここで焦って、十分に治療・検査・記録が揃う前に症状固定へ進むと、申請資料が薄くなりやすいです。 もちろん、治療を引き延ばせば良いという話ではありません。大事なのは、症状固定に進むなら、固定時点で「必要な材料が揃っているか」です。むち打ちは、この判断が結果を左右します。 後遺障害申請を検討すべき目安は「6か月前後+症状の残存」 既存記事にもある通り、実務上、むち打ちで後遺障害申請を検討する目安としては、 おおむね6か月前後の治療を続けても改善が頭打ち 医師の診断に基づく通院を継続している 症状が一貫して残り、日常生活に支障がある といった条件が一つの目安になります。 「半年通ったから必ず認定される」という意味ではありません。逆に言えば、半年未満でも状況によって検討が必要なこともあります。ここはケースごとに見立てが変わるため、早めに専門家と方針を決めるメリットがあります。 被害者請求で資料を整えると「伝わり方」をコントロールしやすい 後遺障害申請には、保険会社が主導する事前認定と、被害者側が主導する被害者請求があります。むち打ちの後遺症のように“見えにくい症状”ほど、被害者請求で資料を組み立てた方が、症状の伝わり方を設計しやすい場面が多いです。 むち打ちで大事なのは、後遺障害診断書だけに頼らないことです。診断書が重要なのは言うまでもありませんが、それだけで伝わらないケースが現実にあります。診療経過や生活支障の説明、必要な検査資料などを、認定基準に沿って整理していくことがポイントになります。 むち打ちの後遺症で失敗しないための注意点は「事故直後から」始まっている ここは石澤法務事務所として、声を大にして言いたいところです。むち打ちの後遺障害は、申請段階で突然うまくいくものではなく、事故直後の過ごし方・通院の仕方・伝え方で、後から効いてきます。 特に大事なのは次の点です。 初期から症状を医師に具体的に伝える(首だけでなく、頭痛・しびれ等も) 通院の空白を作りにくい設計をする(仕事事情があるなら、その前提で方針を作る) 症状の波がある場合でも、一貫した困りごとを言語化しておく 「その日だけ痛い」ではなく、生活にどう支障があるかを記録しておく これは大げさな話ではありません。むち打ちの後遺症は、こうした“地味な積み上げ”が最後に効きます。 石澤法務事務所の取り組みは「見えにくい後遺症を、見える資料に翻訳する」こと むち打ちの後遺症は、被害者の方が悪いわけではありません。単に、「賠償の世界が要求する形」に情報が整っていないまま進んでしまうことが多いのです。 石澤法務事務所では、これまでの認定結果・非該当事例を分析しながら、むち打ちの後遺障害で認定の分かれ目になりやすいポイントを整理してきました。やっていることは派手ではありません。むしろ逆です。 診断書の内容が、認定基準の観点で何が足りないかを点検する 診断書・検査資料・経過の整合性を確認する 症状が生活上どう出ているかを、過不足なく言葉に落とす 「ここが伝われば評価される」ポイントに資料を寄せていく むち打ちは、劇的な証拠が出ることは少ないです。だからこそ、“決め手”は、細部の精度になります。ここを一緒に整えるのが私たちの役割だと思っています。 諦める前に確認してほしい現実的な判断軸 「むち打ちは認定されないと聞いたから」と、最初から引いてしまうお客様も実際に多いです。代表の石澤自身、百回以上は聞いてきたセリフです。 気持ちは分かります。ただ、むち打ちの後遺症で本当に困っている方ほど、先に確認してほしい判断軸があります。 症状が継続しているか(波があっても「困りごと」は続いているか) 通院経過に大きな空白がないか 医師に症状が正しく伝わっているか(記録に残っているか) 症状固定のタイミングが早すぎないか 申請資料が診断書一枚に偏っていないか ここを整えることで、「非該当で終わる流れ」を避けられる可能性は十分あります。 交通事故のむち打ち後遺症は「正しい順序」で進めるほど評価されやすい 最後にまとめます。交通事故でむち打ちの後遺症で悩んでいる方が、最低限押さえておきたい要点は次の通りです。 むち打ちの後遺症は、目に見えにくいが生活を強く削る 認定が難しいのは症状のせいではなく、立証が難しい構造にある 通院の空白、説明の抽象化、早すぎる症状固定が不利に働きやすい 被害者請求で資料を整えると、伝え方のコントロールがしやすい むち打ちの後遺症は、我慢比べではありません。困っているのに、制度の側にうまく届かない、そこを埋めるのが専門家の仕事です。ひとりで抱え込まず、いまの状況を一度、整理するところから始めてください。 症状・障害別ガイド 2020年12月26日 交通事故の重度の後遺障害とは?認定や賠償金で失敗しない注意点を解説 こんにちは。石澤法務事務所代表の石澤です。 重度の後遺障害の場面で、私が一番強く感じるのは、事故直後の対応以上に、「その後の手続き」で差がつきやすいということ。医療、介護、仕事、お金の問題が同時に押し寄せる中で、後遺障害の等級認定と賠償の話が進みます。ここで判断を誤ると、必要な補償が届かないまま長い生活が始まってしまいます。 この記事では、交通事故における重度の後遺障害の考え方、認定の流れ、賠償金で失敗しないための注意点を、現実に寄せて整理しますね。 重度後遺障害は後遺障害等級1級2級を中心に捉える 交通事故の賠償実務でいう重度の後遺障害は、後遺障害等級の1級と2級が中心。状況によっては3級が争点になることもありますが、まずは1級2級を主な対象として理解すると全体像がつかみやすくなります。 重度とされる理由は明確です。日常生活の自立が大きく損なわれ、常時の介護が必要になり得るからです。痛みやつらさの話にとどまらず、生活を支える仕組みそのものが必要になります。介護体制、住環境、見守り、通院、就労の再設計がまとまって発生します。 重度の案件は法律問題である前に生活の問題です。生活が回るかどうかを軸に置くと、判断の優先順位が崩れにくくなります。 重度に該当しやすい後遺障害の典型像を押さえる 重度の後遺障害は診断名だけで決まるわけではありません。ただし実務上、重い等級の議論になりやすい典型像はあります。 代表例としては、遷延性意識障害、脊髄損傷による四肢麻痺や対麻痺、重度の高次脳機能障害、重度の失語や構音障害、失明や視野の著しい欠損、四肢の欠損や著しい機能障害、重度の嚥下障害や呼吸機能障害などが挙げられます。 ここで大切なのは、医学的に重い状態と言われることと、賠償実務上の重度の評価が一致しない場合がある点です。医師から重い状態と言われていても、書類や検査、生活状況の記録が揃っていないと、等級が思ったより伸びないことがあります。残酷に聞こえるかもしれませんが、審査は紙の情報で進みます。 後遺障害等級認定は自賠責の審査で決まる 交通事故の後遺障害等級は、多くの場合、自賠責保険の審査機関が認定します。相手保険会社が決めたと誤解されることがありますが、認定の仕組みを正しく理解しておくことが重要です。 申請方法は大きく二つです。相手保険会社が書類をまとめて提出する事前認定と、被害者側が主体的に書類を集めて提出する被害者請求です。重度案件ほど、生活実態、介護状況、検査結果などの積み上げが必要になります。一般論としては、被害者請求のほうが内容を整えやすい場面が多いです。ただし、治療経過や保険会社の対応状況によって選択が変わることもあります。 重度ほど、資料の抜けがそのまま結果に反映されます。どちらの申請方法を選ぶにしても、提出する中身の設計が要です。 重度案件は後遺障害診断書の内容が審査の軸になる 後遺障害等級の審査は書面審査です。診断書、検査結果、画像所見、日常生活状況など、紙の情報で判断されます。中心となるのが後遺障害診断書です。 落とし穴は、医師が悪いという話ではありません。忙しさの中で、賠償手続で必要になる観点まで書き切れないことが起きます。結果として状態が重いのに診断書の内容が薄くなり、審査が伸びないことがあります。これ、わりと起きます。 重度案件で特に意識したい観点は次のとおりです。 症状固定時の状態が具体的で、抽象的な表現だけになっていない 画像所見や検査結果と診断書の記載が整合している 日常生活能力が客観的に示されている 介護の必要性が具体的に書かれている 誰がどれくらい何をしているか 高次脳機能障害では神経心理学的検査、行動観察、家族の記録が噛み合っている 特に家族の記録は軽視されがちです。病院の記録は医療上の必要に沿って書かれます。一方で、日常生活で何ができず、どんな見守りが必要かは、家族が一番把握しています。介護の実態を説明する材料として、家族のメモが重要になります。 症状固定の判断を急ぐと長期の補償が崩れやすい 等級認定は原則として症状固定後に行います。生活が苦しく、早く示談をして早くお金が必要だと感じるのは当然です。 ただ、重度案件で症状固定を焦ると、取り返しがつきにくいことがあります。必要なリハビリや検査が不足したまま固定になったり、後から新たな障害が明確になっても拾いにくくなったり、将来介護費や将来治療費の説明の土台が弱くなったりします。正直、ここで焦ると痛いです。短期の安心のために長期の補償を削ってしまう形は避けたいところです。 画像と急性期記録とリハビリ記録の不足が認定を落とす 重度案件の審査は、診断名よりも証拠で動きます。特に不足が響きやすいのは次のような資料です。 MRIやCTの画像そのもの 所見だけでは弱くなりやすい 急性期の意識レベル、呼吸管理、ICUや看護記録 リハビリの評価と経過の記録 介護状況の記録 付添、見守り、排泄介助など 医療情報は、取り寄せれば集められることが多いです。 ただ、事故後の混乱期にご家族がすべて揃えるのは現実的に難しい場面もあります。だからこそ、早い段階で、何をどこから取り寄せるか、誰が動くかを決めて、手続を作業として回す必要があります。 賠償金は将来介護費と逸失利益と慰謝料が中心になる 重度後遺障害の賠償では、金額の中心が次の要素になりやすいです。 将来介護費 常時介護が必要な場合は特に重要 逸失利益 事故がなければ得られたはずの収入の補償 後遺障害慰謝料 精神的損害 このほか、状況に応じて、将来治療費、通院交通費、付添看護費、装具や車椅子や介護ベッドの費用、自宅改造費や転居費、近親者慰謝料などが積み上がります。 失敗しやすいのは、一時金の大きさだけで安心してしまい、将来の支出に耐えられる設計になっていないケースです。重度後遺障害は十年単位で生活が続きます。介護体制が家庭中心なのか外部サービス中心なのか、夜間の見守りが必要か、住環境をどう変えるか。これらが賠償項目と金額に直結します。 示談を急ぐほど将来費用が薄くなりやすい 相手保険会社から提示される示談案は、早くまとめることを前提に進みがちです。被害者側に専門家がいない場合、情報量の差がそのまま不利になります。 重度案件で特に注意したいのは次の点です。 認定等級が固まる前に概算で話が進む 将来介護費が十分に検討されない 逸失利益が職業やキャリアの実態に合っていない 家族の介護負担が賠償項目に反映されない まとまった金額が出るなら早く終わらせたいという気持ちは理解できます。ただ、決めた後に現実の支出が追いついてくるケースを、私は何度も見てきました。 異議申立てと紛争処理と訴訟まで含めて早期に戦略を持つ 後遺障害の認定結果に納得がいかない場合、異議申立て、紛争処理制度の活用、裁判での主張立証といった道があります。重度案件ほど、最初の申請で狙いどおりにいかないこともあります。 ただし、異議申立ては気持ちでは通りません。追加で何を出せば評価が変わるかを設計し、資料を揃える必要があります。最初から、もし等級が伸びなかったときに何を補うかまで想定しておくと、動きが止まりにくくなります。 石澤法務事務所が大切にしているのは家族が説明できる形に整えること 重度の後遺障害は、書類の正確さだけでは足りません。被害者側の生活が現実に回る賠償設計になっているかを最優先に考える必要があります。 ご本人が言葉を失っているとき、動けないとき、代わりに説明するのはご家族です。だからこそ、医療者の言葉を賠償の言葉に置き換え、賠償の論点を医療記録や生活記録に落とし込む支援を重く見ています。この往復が噛み合うと、認定も示談交渉も結果が変わることがあります。 交通事故の重度後遺障害で失敗しないための要点まとめ 重度後遺障害は等級1級2級を中心に捉える 等級認定は書面審査で、後遺障害診断書の内容が軸になる 症状固定を焦らず、検査と記録が揃う前に固めない 画像、急性期記録、リハビリ記録、介護実態の資料を早めに確保する 賠償は一時金ではなく将来の生活設計として考える 異議申立てや裁判まで含めた戦略を早期に持つ 重度案件ほど、最初の一手が大きくなります。事故直後は誰でも混乱します。だからこそ、判断の軸を早く取り戻すことが大切です。こちら側で整えられるものは、きちんと整えましょう。 症状・障害別ガイド 2019年04月21日 交通事故後のうつ・PTSDは後遺障害になる?非器質性精神障害の等級認定と実務のポイント 非器質性精神障害とは、脳挫傷や脳出血などの器質的(画像で確認できる)損傷が認められないにもかかわらず、精神機能に障害が残る状態を指します。交通事故をきっかけとして発症するケースが多く、うつ病、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、不安障害、適応障害などが代表例です。 これらは外見上は分かりにくく、レントゲンやMRIで明確な異常が確認できないことも多いため、被害者本人が強い苦痛を抱えていても、周囲や保険会社から正当に評価されにくい後遺障害であるという特徴があります。 精神の後遺症は、周りから「気の持ちよう」って言われてしまいやすいんですが、実務的には「証拠が残りにくい後遺障害」なんです。だから軽いわけじゃなくて、手続き上、取りこぼしが起きやすい。最初にこの前提を知っておくだけで、認定の戦い方が変わります。 交通事故後に現れやすい精神症状の具体例 交通事故後、次のような症状が継続的に現れる場合、非器質性精神障害が疑われます。 車に乗ろうとすると強い恐怖や不安が生じる 事故の場面が突然フラッシュバックする 夜眠れない、悪夢で目が覚める 動悸、息苦しさ、強い緊張感が続く 気分の落ち込み、意欲低下、集中力の低下 外出や就労が困難になる 感情の起伏が激しくなり、日常生活に支障が出る これらの症状が事故前には存在せず、事故を契機として出現・固定化していることが重要な判断材料となります。 非器質性精神障害が後遺障害として認定される仕組み 交通事故における後遺障害は、自賠責保険の後遺障害等級認定手続きを経てはじめて、法的に「後遺症が残った」と評価されます。 非器質性精神障害については、主に次の3つの等級が問題となります。 非器質性精神障害に該当する後遺障害等級 第9級10号(労務制限が相当程度認められる状態) 通常の労務には服することができる ただし、非器質性精神障害により就労可能な職種が相当程度制限される状態 職場復帰が難しい、業務内容の大幅な変更が必要なケースなど 第12級13号(一定の精神的障害が残存する状態) 通常の労務には服することができる 非器質性精神障害により多少の障害が残っている状態 不安・抑うつ症状が継続し、日常生活や就労に支障があるケース 第14級9号(軽微だが無視できない精神症状が残る状態) 通常の労務には服することができる 非器質性精神障害により軽微な障害が残っている状態 精神症状が軽度でも、事故との因果関係が認められる場合 精神障害の等級は、「診断名」で決まるわけじゃないです。うつ病・PTSDと書いてあっても、仕事や日常生活の制限がどの程度か、そしてそれが医証(診断書や通院経過)にどう落ちているかで決まります。現場の感覚としては、症状の強さより「生活への影響が書類で再現できているか」が勝負になりやすいです。 非器質性精神障害 × 等級別の具体的認定事例 非器質性精神障害は、症状の強さ × 生活・就労への影響 × 医証の整い方この3点の組み合わせによって等級が分かれます。 ここでは、第9級・第12級・第14級それぞれについて、「どのような状態だと、その等級になるのか」が直感的に分かるよう、具体事例で整理します。 第9級10号に認定された典型事例「就労は可能だが、職種・業務内容が大幅に制限されるケース」 事例①:PTSDによる職種制限が認められたケース 被害者属性 40代男性 職業:営業職(自動車運転が必須) 事故態様:追突事故(高速道路) 主な症状 車に乗ろうとすると動悸・過呼吸 事故現場を思い出すフラッシュバック 夜間の不眠、集中力低下 抗不安薬・睡眠薬を継続処方 就労状況 事故後、営業職としての復帰が困難 会社の配慮で内勤業務に配置転換 給与は減少、昇進の見込みも後退 評価ポイント 通常労務(軽作業・内勤)は可能 しかし、事故前の職種(営業・運転業務)が実質的に不可能 就労可能な職種が「相当程度制限」されている 認定結果■ 第9級10号 認定 「非器質性精神障害により、就労可能な職種が相当な程度制限されるもの」 第12級13号に認定された典型事例「日常生活・就労に支障が続くが、職種制限までは至らないケース」 事例②:うつ症状が固定化し、生活に支障が残ったケース 被害者属性 30代女性 職業:事務職 事故態様:交差点での出会い頭事故 主な症状 抑うつ気分、意欲低下 朝起きられない日が増加 集中力低下、ミスが増える 抗うつ薬を半年以上継続 就労状況 フルタイム勤務は可能 ただし、欠勤・早退が増加 業務効率が明らかに低下 評価ポイント 通常労務は一応可能 しかし、精神症状が固定化し、日常生活・就労に明確な支障 医師の診断書に「症状固定後も改善困難」との記載あり 認定結果■ 第12級13号 認定 「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」 第14級9号に認定された典型事例「軽度だが無視できない精神症状が残存するケース」 事例③:軽度PTSD症状が残存したケース 被害者属性 20代男性 職業:大学生(アルバイト) 事故態様:自転車走行中に自動車と接触 主な症状 車の音に過敏に反応 事故現場付近を避ける行動 不安感が続くが、日常生活は概ね可能 就学・生活状況 大学への通学は継続 アルバイトも再開 ただし、精神的ストレスは継続 評価ポイント 労務・学業は可能 しかし、事故による精神症状が医学的に確認でき、完全消失していない 心療内科での通院記録あり 認定結果■ 第14級9号 認定 「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの」 非器質性精神障害が認定されにくい理由 非器質性精神障害は、後遺障害の中でも特に認定が難しい分野とされています。その理由は明確です。 画像検査で客観的異常が出にくい 症状が主観的になりやすい 医師の診断書の書き方で評価が大きく左右される 事故との因果関係が争われやすい そのため、単に精神科に通院しているだけでは、適正な等級認定に至らないケースが非常に多いのが実情です。 早期の専門医受診が重要になる理由 事故後に精神的な異常を感じた場合、できるだけ早期に精神科・心療内科などの専門医を受診することが重要です。 初診時期が遅れると、事故との因果関係が否定されやすくなる 症状の経過が医療記録として残らない 後遺障害診断書に反映されにくくなる 「気のせいかもしれない」「我慢すれば治る」と判断せず、事故後の異変として医師に正確に伝えることが、後の認定手続きに直結します。 非器質性精神障害の後遺障害認定に必要な視点 非器質性精神障害の認定では、次の点が特に重視されます。 事故前と事故後の精神状態の明確な差 症状の継続性・一貫性 治療内容と治療期間 医師の専門的見解 日常生活・就労への具体的影響 これらを医学的・実務的に整理し、適切な形で提出することが不可欠です。 石澤法務事務所が非器質性精神障害に強い理由 石澤法務事務所では、非器質性精神障害を含む「目に見えにくい後遺障害」の認定実務に専門特化して取り組んでいます。 過去の認定・非認定事例を踏まえた医療調査 精神科医の診断内容を認定基準に即して整理 事前認定で不利になりやすいケースの被害者請求対応 非該当となった場合の異議申立て対応 単なる書類提出ではなく、「なぜこの症状が後遺障害として評価されるべきか」を、認定機関に伝わる形で構成することを重視しています。 非器質性精神障害で悩んでいる方へ うつやPTSDなどの精神的後遺症は、「見えないから軽い」「気の問題」では決してありません。 交通事故をきっかけに人生が大きく変わってしまう方も少なくなく、その影響は就労・家庭生活・社会生活全般に及びます。 「この症状は後遺障害になるのか」 「非該当と言われたが納得できない」 「今の等級は本当に適正なのか」 このようなお悩みをお持ちの方は、交通事故後遺障害、とくに精神障害の認定に精通した専門家への相談が重要です。 石澤法務事務所では、非器質性精神障害についても一つひとつ丁寧に状況を確認し、最適な後遺障害認定手続きをご提案しています。 1