交通事故によって後遺障害が残った場合、
事故がなければ将来にわたって得られたはずの収入が失われることがあります。
この将来の収入減少分を金銭的に評価したものが「逸失利益」です。
逸失利益は、
治療費や休業損害とは異なり、
後遺障害が認定されて初めて請求できる損害項目であり、
賠償額の中でも大きな割合を占めることが少なくありません。
代表 石澤逸失利益って、被害者の方の体感だと“ピンとこないお金”になりやすいんですが、実際は賠償の中でかなり大きい柱です。しかも、治療費みたいに「かかった分」ではなく、将来の不利益をどう評価するかなので、ここを甘く見られると金額差が一気に開きます。
逸失利益の基本的な計算式
逸失利益は、次の計算式に基づいて算出されます。
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する係数
この3つの要素の組み合わせによって、
最終的な逸失利益額が決まります。
どれか一つが過小評価されると、
本来受け取れるはずの金額との差が大きくなります。
「基礎収入」とは、原則として事故前の収入額
「基礎収入」とは、
原則として事故前の収入額を指します。
会社員や自営業者の場合は、
事故前の実際の収入(給与・事業所得)が基礎となりますが、
必ずしも現金収入があることが条件ではありません。
たとえば、
- 専業主婦
- パート・アルバイト
- 学生
といった方であっても、
「賃金センサス(統計資料)」を用いて、
社会的に評価された労働価値を基礎収入として算定します。
この点を正しく理解していないと、
「収入がないから逸失利益は出ない」と
誤った前提で話が進んでしまうことがあります。



ここ、誤解されやすいんですが、「今たまたま収入がない」=逸失利益ゼロ、ではありません。専業主婦や学生、パートの方でも、社会的な労働価値を統計で評価できるケースがあります。最初の段階で『収入ないので逸失利益は出ませんね』みたいな話になっていたら、前提が間違っている可能性があるので注意してください。
労働能力喪失率の位置づけ
「労働能力喪失率」とは、
事故によってどの程度、労働能力が失われたかを割合で示したものです。
この割合は、
- 後遺障害等級
- 症状の内容
- 職業への影響
などを踏まえて判断されます。
実務上は、
後遺障害等級ごとに一定の目安となる喪失率が存在しますが、
必ずしも一律に決まるものではありません。
同じ等級であっても、
- 職種
- 実際の業務内容
- 症状の影響度
によって、
評価が調整される余地があります。
労働能力喪失期間の考え方
「労働能力喪失期間」とは、
事故によって失われた労働能力が、
将来にわたってどれくらいの期間影響するかを示すものです。
一般的には、
- 就労可能年齢:67歳
- そこから症状固定時の年齢を差し引いた期間
を基準として考えられます。
ただし、
すべてのケースで一律に67歳まで認められるわけではなく、
- 後遺障害の内容
- 症状の重さ
- 回復の可能性
などを考慮して、
期間が短縮されることもあります。
ライプニッツ係数を用いた現在価値への換算
逸失利益は、
将来にわたる収入減少を一括で受け取ることになるため、
中間利息を控除した現在価値に引き直して計算されます。
このときに使われるのが、
ライプニッツ係数です。
ライプニッツ係数は、
- 労働能力喪失期間
- 年5%の中間利息控除
を前提に算出された数値であり、
喪失期間が長くなるほど係数は大きくなります。
ライプニッツ係数については、以下の記事で詳しく解説しています。


逸失利益は後遺障害等級認定が前提
逸失利益の算定は、
後遺障害等級が認定されていることが前提条件です。
後遺障害が非該当と判断されてしまうと、
基礎収入や喪失率をいくら主張しても、
逸失利益そのものが認められません。
そのため、
- 適正な後遺障害等級認定
- 症状の実態を正確に伝える資料の整備
が、逸失利益確保の出発点となります。
石澤法務事務所が重視する実務ポイント
石澤法務事務所では、
逸失利益の金額そのものだけでなく、
その前提となる後遺障害等級認定の段階を最も重視しています。
具体的には、
- 後遺障害等級が過小評価されていないか
- 労働能力喪失率が症状や職業に見合っているか
- 喪失期間が不当に短く設定されていないか
といった点を、
過去の認定実績・実務データをもとに精査します。
後遺障害認定が適正に行われなければ、
その後の逸失利益算定も適正にはなりません。
専門家による検討が重要な理由
逸失利益は、
一見すると計算式に当てはめるだけのように見えますが、
実際には各要素の評価が争点になることが多い損害項目です。
特に、
- 非該当とされた後遺障害
- 低い等級にとどまったケース
- 異議申し立てを検討している場合
には、
後遺障害実務に精通した専門家による検討が欠かせません。